精液処理

人工授精や体外受精では「精液を洗浄濃縮して使用する」とか「運動成熟精子を回収して使用する」と書いてある本やHPが多いです。では、胚培養士は具体的にどんな処理をしているのでしょうか?

密度勾配法

細胞は成熟するほど比重が高くなる傾向があります。また、死滅した細胞は細胞膜の透過性が壊れてしまうため、水分が流入し、比重が低くなります。つまり、未熟精子や死滅精子は成熟精子と比較して比重が低いということになります。

そこで、使用するのが成熟精子と未熟精子や死滅精子の間の比重になるよう調整された試薬です。

比重の調整された試薬の上に精液を重層して、遠心分離することにより、成熟精子は試薬の下に、未熟精子や死滅精子は試薬の上部に留まります。

あとは、下に溜まった精子を回収して人工授精や体外受精に使用します。

施設により比重の違う2種類の試薬を使ったり、1種類のみであったりはしますが、基本はこの密度勾配法といわれる方法を行っています。

また、この方法を実施することで、成熟精子の分離以外にも細菌やウイルスの大半を除去できると言われています。

ただし、デメリットもあり、遠心分離時に精子に300Gもの遠心力がかかるため、物理的に精子にダメージを与える可能性や、活性酸素の産生が亢進されてDNA断片化を引き起こすことが知られています。

スパムセパレーター

体外受精の精子処理に関してはスパムセパレーターというものが開発されています。これはフィルターを通して運動精子を回収する方法で、密度勾配法に比べ、精子へのダメージが少ないという特徴があります。

理論上はスパムセパレーターのほうが良い精子を分離できるはずですが、学会発表を見た感じでは体外受精の成績はどちらの方法でも有意差がなく、今後も検討が必要な処理になります。ただ、遠心分離などで精子が動かなくなる症例もあるので、そういう方には良いかもしれません。

Copied title and URL